Francis Lam | HITSPAPER™ : ASIA CREATIVE SPOT
太陽を抽象的に表現した「SUNNIE」は、太陽フレアと太陽の活発な活動をイラスト化するiPhone/iPad App。このアプリは、オーディオビジュアル・シンセサイザーや時計としても機能する。動画はこちら。
ク リエイターのコミュニケーション・スペース「db-db-.com」の創始者であり、ピクセル・アーティストとしても知られる香港出身のフランシス・ラ ム。現在は、生まれ故郷である上海を拠点にし、ワイデン+ケネディ上海の重要なメンバーとして、中国発の注目すべきクリエイティブ作品の数々を手掛けてい る。国際的なバックグラウンドを持ち、流暢な英語を話す彼は、グローバル化が加速する中で存在感を増す今の上海を象徴するような人物だ。活気溢れる上海の スタジオで勤務中のフランシス・ラム氏にSkypeインタビューを行った。
- 自己紹介をお願いします。
Francis Lam:フ ランシス・ラムです。ワイデン+ケネディ上海のクリエイティブ・テクノロジストです。以前は、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディア・ラボに在籍 していました。当時は、ソーシャルネットワーキングのプラットフォームに焦点を当て、中でも出会い系サイトの研究をしていました。人と人とのコミュニケー ションを促進するビジュアライゼーションやインターフェイスなどは今も行っています。ほかには、ウェブアートやインタラクティブ・インスタレーション、最 近はiPhone Appも開発しています。
フランシス・ラム氏による、いつでもどこでも雪を降らせることができるiPhone App「Snowie」。ダウンロードはこちらから。
- なぜデジタルの世界に進まれたのですか?
Francis Lam:今 はそれほどゲームをしませんが、子供の頃は任天堂のスーパーマリオに夢中でした。ピクセル・グラフィックがとても好きで、8ビットのゲームに大きな影響を 受けたと思います。香港にいた頃は、大学でコンピューター・サイエンスを専攻しましたが、絵を描くことやデザインすることも大好きで、専門学校でグラ フィック・デザインも学びました。テクノロジーをツールとして使ったデザインで自己表現をすることに興味があったのです。MITで修士課程を終えられたこ とは、本当に幸運だったと思っています。
- フランシスさんの名前が知られるきっかけとなった「db-db.com」というサイトについて教えてください。
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Francis Lam:db- db.comは2001年に始まり、何度もバージョンアップされてきました。最初の頃は僕の個人的なウェブサイトだったのですが、2003年か2004年 頃にはデザイン・コミュニティとなり、2006年頃からはソーシャル・ネットワーキングのプラットフォームとなりました。とは言え、情報を共有するだけで なく、クリエイター同士が心から付き合うことができるような場所を目指しているので、愛と信頼がベースになっています。今年はdb-db.comの10周 年にあたるので、以前のフラッシュ・バージョンから自分のルーツを再確認するためのHTMLバージョンにリニューアルしたばかりなのですが、機能面は可能 な限り以前と同じにしています。
中華圏のクリエイターの間で多くの支持を得る「db-db.com」。日本のクリエイティブ情報も多数紹介されている。
- フランシスさんがこれまで手掛けてきたプロジェクトの中で特に注目を集めた、ピクセル画の裸の男性がブラウザ上を走り回る「Nudemen」についても教えて頂けますか?
Francis Lam:確かに「Nudemen」は他の作品よりも露出が多かったように思います。初めは、「Nudemessanger.com」 から始まり、インスタレーション、iPhone App、ゲームへと発展していきました。制作のきっかけは、僕がまだ学生だった2003年に日本で行われたキヤノン・デジタル・クリエーターズ・コンテス トというコンペです。賞金が最高で20,000ドル(約160万円)だったので、単純にそれが目的で何か作品を作ろうと決心しました(笑)。コンセプトは ネット・ポルノなんですよ。学生の頃、ネット上で最も多く語られるトピックを調査をしたところ、結果はポルノで、そのうちの8割は女性の裸に関するもの だったので、ネット上に裸の男性の画像を増やして全体のバランスを取ってはどうだろう、というおかしなアイディアが浮かんだのです。そこで、自分をモデル に様々な動きをピクセル化し、ネットで送れる無料のグリーティングカードのプログラムを制作しました。当時はFacebookなどのSNSが生まれる前で したから、誰もが今とは違うローテクなコンピュータの使い方をしていて、ネット上でカードを送り合っていました。
「Nudemen」シリーズの始まりは、eカードの「Nudemessanger.com」。
ウェブサイトだけでなく、iPhone、iPod、iPad Appとしても楽しめる「Nudemen Clock」。ダウンロードはこちらから。
- フランシスさんは長い間、香港を拠点にし、香港のデジタル・アーティストとして知られていましたが、なぜ上海への移住を決心されたのですか?
はどのように組み込まれになるには
Francis Lam:理 由は様々ですが、中国本土を拠点にしてdb-dbに力を入れたかったことと、僕は生まれてから2歳になるまで上海で過ごしていたので、祖母をはじめ親戚の 多くもここにいるからでしょうか。移住を考えていた頃、W+K上海がデザインとテクノロジーの両方の知識を持つ人物を探していたので、僕にとっても良いタ イミングだと思いました。
- W+K上海では、商業的なものと商業的ではないものの両方の作品に数多く関わっていらっしゃいますが、特に思い出に残っているのはどの作品でしょうか?
Francis Lam:僕 が主に担当しているのはNIKEとConverseのプロジェクトですが、僕には三つの役割があります。ひとつはデジタル技術を駆使しながらアイディアに 磨きをかけて、よりクリエイティブなものにすること。二つ目はテクニカル・コンサルタント的な役割で、技術的に良い作品かどうかを判断すること。そして三 つ目はインハウスのプロジェクトのリサーチです。昨年制作したNIKE Sportswear Chinaのインタラクティブ・フットボール・マッチは、モーション・トラッキング・システムを必要とする作品でしたが、予算にも制作期間にもかなりの制 限があったので、センサーもトラッキング用のソフトウェアもアニメーションも全て自分達の手で行なわなければならず、とても良い経験になりました。
NIKE Sportswear Chinaのネット配信用ショートビデオ。制作期間は約2週間で、約10名の制作チームには、以前Asia Creative Spotにも登場したGino Woo氏がクリエイティブ・ディレクターとして参加していたそう。
- NIKEからの最初の依頼はどのようなものだったのでしょうか?
Francis Lam:キャ ンペーン用にオンラインで配信するショートビデオを制作して欲しい、というだけの依頼だったと記憶しています。依頼を受けて、僕達はポストプロダクション を使わずに、実写に近い形で、スクリーン上で格好良く見えるものを作りたいと思いました。企画から制作までにデザイナー、プログラマー、アートディレク ター、コピーライター、サウンド・デザイナー、プロデューサー、プロジェクト担当責任者など、10人程のチームが動き、約2週間というかなり厳しいスケ ジュールの中でこの作品が生まれました。
販売している訪問天使のフランチャイズがあります
ほかには、W+Kのオリジナル・プロジェクトの「上海ガイド」が思い出深いですね。僕達の周りに は上海を訪れる外国人の友人や知人が多いので、彼らのために制作したものです。上海ガイドは過去3年間作り続けていて、最初の年が印刷物、次の年がウェブ サイト、そして今回がiPhone Appです。今後は、新しいスポットの追加のほかに、W+KがあるポートランドやNYなど別の街のバージョンも作ってみたいと思っています。
上海のオススメスポットや中国語のフレーズ集が入ったW+K上海制作による上海ガイド。ダウンロードは無料。三大広告賞のひとつであるOneshowでは、このアプリが今年のファイナリストに選ばれている。
- 上海のデジタルデザイン・シーンに関してはどのようにお考えですか?
Francis Lam:面 白いクリエイターは増えてきましたが、上海のデジタルデザインはまだ成熟してはいないと思います。中国は経済の発展が著しいので、デジタル・デザインの需 要は増えるばかりで、実際に多くのデザイナーが上海にやって来ています。北京・広州と同様に、上海は中国国内で最も国際的な都市なので、クオリティの高い デザインを生み出さなければならないのですが、作り手に可能性があっても、政治的な理由や社会のシステムなどが妨げになり、非常に制限されているように感 じます。特にソーシャル・メディアとしてのデジタル・メディアについては、国外にはFacebookやTwitterなどがありますが、中国国内には Facebookの代わりのRenRen、Twitterの代わりのWeiboな ど模倣サイトはあっても、何か新しいことを始めようと思うと高い壁が立ちはだかり、非常に困難であるのが現状です。中国にはさほど影響はありませんでした が、2009年の世界不況で広告業界の予算は減少し、デジタルなものに目を向ける人が増えたように思います。ですから今はデジタルデザイン業界全体の発展 を助長する必要があるのです。
- 現段階では上海在住の優秀なデジタル系デザイナーはどの程度存在するのでしょう?
Francis Lam:Super NatureやO/RのLeal Baoなど、素晴らしいデザイナーは少なからず存在しますが、多くを見つけるのはとても難しいですよ。W+Kでの僕の役割のひとつは、優秀なデジタル・デザイナーを探し出すことでもあります。
- W+K上海のメンバーとしてデジタルデザイン・シーンに深く関わる一方で、「Origin Woodwork」という木製家具のお店も経営していらっしゃいますね。
Francis Lam:あ のショップは僕にとって心から寛げる場所でもあります。普段からデジタルな世界で時間を過ごすことが多いので、実際に手で触れられるものが恋しくなること があるんです。db-dbでは、Tシャツなどのプロダクトも制作しているのですが、以前から「d」と「b」の形をした椅子を作りたいと思っていました。 「d」と「b」は、椅子に最適な形ですからね(笑)。今ではあの場所は、僕のスタジオでもショップでもあり、友達と語らう場所でもあるんです。週末にはよくあそこにいますよ。
大使館や領事館が並ぶ旧フランス租界地区に位置するファニチャーショップ「Origin Woodwork」。
- 将来の予定は?
Francis Lam:もっと色々と探求してみたいですね。例えば、全く違う場所に住んでみたり。人は成長するために変わり続けなければいけないと思っているのですが、僕が今いる環境は快適すぎるような気がしています。
- 上海で最もインスピレーションを受ける大好きな場所をひとつ教えてください。
Francis Lam:職場であるW+K上海でしょうか。僕が上海で一番多くの時間を過ごす場所であり、そこにいる人々やその場のバイブレーションにとても刺激を受けています。
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Francis Lam(林昇源)
上 海生まれ、香港育ちのピクセル・アーティスト、ウェブデザイナー。現在は、ワイデン+ケネディ上海に勤務。マサチューセッツ工科大学メディアラボの修士課 程を終えた後、2001年に香港でウェブサイト「db-db.com」をスタートし、サイトは現在もクリエイティブ情報の発信基地やクリエイターのコミュ ニケーション・スペースとして多くの人に支持されている。上海ではファニチャーショップ「Origin Woodwork」を経営。日本のオンラインショップ「TeeParty」では、TEE PARTY by ASHUより、5種類のTシャツもリリースしている。
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