米国の特許制度
米国の特許制度 日本知的財産協会 関西C4Bコース |
2007.12.20
朝日奈特許事務所 弁理士 朝日奈宗太
第1回 目次
はじめに
はじめに
米国への特許出願件数
米国特許取得件数ランキング
(企業別、大学別)
米国の特許裁判制度の特徴
日米特許FTA構想
特許法改正の動向
1.特許を受けることができる発明
2.出願
3.出願書類
4.日本国特許明細書と米国特許明細書
5.明細書作成の手順と考え方
6.クレームの記載
6.1 クレームの構成
6.2 クレームの型
6.3 独立クレーム・従属クレーム
はじめに
最近の出願件数の推移
|
出所:特許行政年次報告書
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企業別米国特許取得件数
〜2006年ランキング〜
|
出所:IFI調べ
〜2005年ランキング〜
|
出所:IFI調べ
大学別米国特許取得件数
〜2005年ランキング〜
|
出所:サンフランシスコ研究連絡センター
〜2004年ランキング〜
順位 | 出願人 | 件数 |
1 | カルフォルニア大学 | 424 |
2 | カルフォルニア工科大学 | 135 |
3 | マサチューセッツ工科大学 | 132 |
4 | テキサス大学 | 101 |
5 | ジョン・ホプキンス大学 | 94 |
6 | スタンフォード大学 | 75 |
7 | ミシガン大学 | 67 |
8 | ウィスコンシン大学 | 64 |
9 | イリノイ大学 | 58 |
10 | コロンビア大学 | 52 |
出所:サンフランシスコ研究連絡センター
企業別PCT出願動向
〜PCT出願に係る国際公開公報掲載ランキング〜
80分の20給与·何それは、
順位 | 出願人 | 国際公開年 | ||||||||||||||||||||||||||||||
1 | Koninklijke Philips Electronics N.V.(NL) |
| ||||||||||||||||||||||||||||||
2 | Matsushita Electric Industial Co., Ltd. (JP) | |||||||||||||||||||||||||||||||
3 | Siemens Aktiengesellschaft (DE) | |||||||||||||||||||||||||||||||
4 | Nokia Corporation (FI) | |||||||||||||||||||||||||||||||
5 | Robert Bosch GmbH (DE) | |||||||||||||||||||||||||||||||
6 | 3M Innovation Properties Company (US) | |||||||||||||||||||||||||||||||
7 | BASF Aktiengesellschaft (DE) | |||||||||||||||||||||||||||||||
8 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisya (JP) | |||||||||||||||||||||||||||||||
9 | Intel Corporation (US) | |||||||||||||||||||||||||||||||
10 | Motorola, Inc. (US) |
出所:特許行政年次報告書
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米国の特許裁判制度の特徴
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日米特許FTA構想
1.日米の共通の特許出願を対象とする。
2.いずれかの国で、審査で特許査定を受けたときは、他国でも特許査定を受けたものとする。
3.その上の審判(再審査)、訴訟を求める権利は残しておく。
特許法改正の動向
今後の改正のスケジュール
米国特許法改正案は、上院S.1145法案、下院H.R.1908法案として、まったく同じ内容で2007年4月18日に
それぞれ提出された。その後上院案、下院案は若干異なる修正を加えられながら、両院の委員会をそれぞれ通過し、
上院と下院の本会議に上程される。
なお、上院案は議会が承認し、大統領がサインをしてから12ヵ月後に発行し、下院案は大統領のサイン後、
さらに日欧特許庁が1年間のグレース期間を認めたのち発行する。両院の異なる法案が成立すれば、
いずれの案に統一するかのすり合わせが行なわれるようである。
いまだ先行きが不明なところもあるが、改正案の要点について述べる。
@先発明者先願主義への移行
先発明者先願主義では,先願であり,かつ真正の発明者が特許を受けられる。すなわち,
先願であっても,冒認はもちろん,第三者から知得した者による先願も,特許を受けられない
(発明者から知得した正当な承継人による先願のみは可であろう)。
A新規性・先行技術の規定の改正
・世界公知主義がとられる。
・発明者自身の発表に関するグレースピリオドは従来どおり12ヵ月である。
・発明者等が公知にした後の他人による発表は先行技術にならないという規定が設けられる。
B特許後見直し手続
現在の再審査制度とは別に、これと並存する形で特許後見直し手続が新たに設けられる。
(1)見直し手続の請求期間は、
(i)特許発行または再発行から12ヵ月、または
(ii)特許の存続が相当の経済的損害を起こすこと
を証明した場合か、特許権者から侵害の警告
を受けた場合である。
(2)見直しの請求手続は、
1つ以上の無効クレームを特定し、無効の根
拠とその証拠を提出して行なう。
(3)特許権者には、答弁書を提出する機会が与えられ、また同時に明細書、クレームなどの補正
(クレームの削除、差し換えクレームを含む)をすることもできる。
(4)その後、ディスカバリ手続やヒアリングを経て、手続開始から1年以内に、
見直し決定(維持または取消)が合議体によりなされる。
C Hilmer Doctrine の廃止
Hilmer Doctrineとは、アメリカ以外の出願を優先権主張の基礎とするアメリカ出願が、
競合する出願の特許性を否定する先行技術としての効果が生ずる日は、外国出願の日(優先日)
からではなく、現実のアメリカ出願日からである、というアメリカの判例にもとづく原則である。
この原則が廃止され、優先日から後願排除効が生ずることになるようである。
D 全件出願公開
出願公開の例外規定が削除されることによって、非公開制度がなくなり、すべての出願は、
出願日(優先権主張を伴う場合は、優先日)から18ヵ月後に出願公開される。
E不公正行為の基準
IDS違反の抗弁は特許が無効になるかもしれない先行技術を開示しなかった場合に可能となる。
F故意侵害の判断を適正化する
Knorr判決(非侵害であるとの鑑定書を信じて侵害行為を続けたとの抗弁は一般に有効であるが、
鑑定書そのものの抗弁が提出されない場合、侵害者にとって不利になる(侵害者の故意が推定される)
可能性がある。しかし、 Knorr判決では、たとえ鑑定書が提出されないとしても、そのことのみに
よっては侵害の故意の推定をしてはならない,と判断された)を受けて,故意侵害は次のうちいずれかの
場合に限り認められるようである。
G故意侵害の判断を適正化する
@特許権者から侵害者に対し書面による通知がなされること
A侵害者が特許であることを知りながら,特許発明を意図的に複製していること
B侵害認定後の継続的な侵害
H損害賠償
リーズナブルなローヤルティーの規定は存置し、"entire market rule"(特許が製品の一部でも、
全体の価格でローヤルティーを計算する方法)が補足的に規定されるようである。
I特許発行前の第三者による情報提供制度の強化
現行法では公開後2ヵ月以内に限られているが,改正法案ではUSPTOの許可通知日か公開から
6ヵ月経過後かオフィスアクション発送日のうち,いずれか遅く満了するまでできる。先行技術に
関する簡単な記載を含ませることができる。
J当事者系再審査の全件への適用
当事者系再審査の制度は1997年に導入されたが、その適用は法改正後の出願のみに限られていた。
今回の改正により、当事者系再審査制度は全件に適用可能となる見込みである。
K先使用権の適用範囲を広げる(現在はビジネスモデル特許のみ)
現在はビジネスモデル特許にしか認められていない先使用権が全技術分野に適用される。
Lベストモード要件の存続
ベストモード要件はアメリカ特許法特有のものであり,日本やヨーロッパの手続と
一致しないので反対の声が多かった。そこで、以前(2005)の改正法案ではベストモード要件を
廃止する方向であったが、今回の改正法案では存続することになっているようである。
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1 特許を受けることができる発明
101条
新規かつ有用な方法、機械、製造物、化学組成物、およびこれらの新規かつ有用な改良を発明または発見した者は、特許を受けることができる。
方法(process)
機械(machine)
製造物(manufacture)
化学組成物(composition of matter)
公知の方法、機械、製造物、化学組成物または材料について新規な用途を発見した場合、方法の発明として特許を受けることができる。
(例)
A method for treating anxiety in a human
subject … …which comprises the administration …
…of fluoxetine … …or pharmaceutically acceptable
salts thereof.
フルオキセチンまたはその塩を投与することからなる、ヒトの不安を治療する方法(米国特許第4,590,213号)
- ヒトを手術、治療または診断する行為は特許を受けることができる。
(例)
外科的方法により脳内視床下核に電極を挿入して発作を抑制する治療方法。(米国特許第5,800,474号)
ただし、医師の施術に対しては、差し止めや損害賠償の請求ができない。
軍隊での共同domicleを提出する方法
- 生物も特許の対象となる
ヒトの操作によって作り出されたものであれば§101の製造物(manufacture)であり、生物であっても特許を受けることができる。
Chakrabarty事件の最高裁判決
「生物であるか否かは関係ない。自然にえられたものか、ヒトが作り出したものか、である。」
Diamond, Commissioner of Patents and Trademarks v. Chakrabarty (206 USPQ 193,1980)
米国連邦最高裁判所は、遺伝子工学的手法によって得られる
「少なくとも2種の安定なエネルギーを発生する遺伝子を含み、それら遺伝子の各々は個別の炭化水素分解経路を与える
シュードモナス属から得られる細菌」の特許性を認め、微生物自体も特許の対象となる旨を判示した。
医療関連発明
例1: 不安を低減するための特定のはり療法ポイントの表面刺激
不安に関連した障害の治療方法であって、
次のステップからなる方法。
(a)患者のX、YおよびZの刺激ポイントのそれぞれに電極を接触させること
(b)前記電極に電流を適用すること
例2: 後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療のための非致死性コンディショニング法
HIVウイルスの負荷量を減らす方法であって、
次のステップからなる方法。
(a)AIDSを示すHIV感染している患者を選択する
(b)患者に致死量ではない放射線治療の照射をあたえる
例3: 角膜の表面再生方法
再発性角膜びらんの治療方法であって、
次のステップからなる方法。
(a)角膜びらんが生じている場所の表面を色素でマークする
(b)マークされた角膜の表面を治療に充分な時間レーザーを照射する
例4: ヒト胚共培養システム
女性からの卵母細胞を卵管の上皮細胞の単層と接触させ、卵母細胞を受精させ、胚を該女性に戻すことからなる
体外受精を行なわせることによって、妊娠の確率を向上させる方法。
例5: 呼吸器感染の予防方法
タンパク質Xをコードするプラスミドを鼻に投与することによる、RSウイルス感染の阻害方法。
例6: 癌の治療方法
癌患者に有効量の医薬Yを投与し、適当な時間をおいたのちに医薬Yを該患者に投与することからなる癌の治療方法。
医療関連行為に対する各国の取り扱い
|
米国では、医師等の医療行為には特許権の効力は及ばない。
- コンピュータプログラム(1)
・自然法則、物理現象、単なるアイデアは特許の対象ではない。
・数学的アルゴリズムを実行するためのステップは、特許の対象ではない。
Gottshalk v. Benson (175 USPQ 673, 1972)
最高裁は、「2進化10進数を純2進数に変換する方法」について、特許の対象ではないとした。
・コンピュータの処理結果を利用して何らかの物理的処理・操作を行なう場合、特許を受けることができる。
・単なるアイデアや数学的アルゴリズムであっても、その応用は特許を受けることができる。
Diamond v. Diehr (209 USPQ 1, 1981)
最高裁は、「金型に設けた測定手段で温度を測定し、測定結果に基づきコンピュータで硬化のための所要時間を計算し、
所要時間経過後に金型を開けるゴムの加硫方法」について、特許の対象であると判決した。
特許を受けることができる。
State Street Bank事件の最高裁判決
「ビジネスメソッドであるという理由で、特許の対象外とするのは誤りである。」
State Street Bank & Trust Co. v. Signature Financial Group, Inc (149F 3d 1368, 47 USPQ 2d 1596 (Fed. Cir. 1998))
「ビジネスメソッドであるという理由で、特許の対象外とするのは誤りである。ビジネスメソッドも他の発明と同様に
扱われなければならない」とし、ビジネスメソッドが35 USC 101に定められた<特許を受けることができる発明>であることを明確にした。
State Street Bank事件
Signature Financial Group, Inc.(米国特許第5,193,056号)
<ハブおよびスポークから構成される金融サービスにおけるデータの処理システム>
●複数のスポーク(基金)から資金を単一ハブ(ポートフォリオ)に集めて資金を株などで運用し、出資に応じて利益を配分する。
●個々のスポーク(基金)で運用するよりも、資金の有効運用、管理費用の節約、税法上の利益を得る。資金の分配を
短時間に決定しながら運用できる。
特許の種類
アメリカでは、一般の特許のほか、
植物特許(plant patent)
意匠特許(design patent)
が特許法で保護されている。
植物特許
・植物特許の保護対象
新規な無性繁殖植物(塊茎植物は除く)
(無性繁殖植物:接木、挿木など、塊茎植物:じゃがいもなど)
・植物特許の権利
他人によるその植物の無性生殖、再生された植物の販売、使用を排除することができる。
1970年に植物新品種保護法が制定され、有性植物が保護されるようになった。
保護期間は18年。
保護の要件:
・顕著性がある
・同一性のあるものが作れる
・有性繁殖させたとき本質的な部分を残す能力がある。
意匠特許
・意匠特許は日本の意匠に相当するが、特許法に規定されている。
・特許が機能を保護するのに対し、意匠特許はものの外観のみを保護する。
・審査は意匠特許のみならず、通常特許との間で行われる。
意匠特許の特許期間は14年であり、特許維持料金はない。
通常特許との違い:
・意匠特許は、PCT出願することができない。
・優先権主張期間は6ヵ月。
・102条(d)の適用期間は6ヵ月。(なお、102条(b)の適用期間は通常特許と同様に12ヵ月)
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2 出願
アメリカにおける出願
発明者の国籍に関わらず、米国で完成した発明はまず、米国で出願しなければならない。
また、米国特許出願日から6ヵ月経過するまで、外国で出願することができない。これは国防上の秘密に関する
発明であるかどうかを審査するためである。
審査の結果、秘密指令(secret order)が発令されると、外国へ出願できない。
出願書類の提出
米国特許商標庁へ出願書類を提出。
↓
方式審査
必要な書類がそろっているか確認
↓
必要であれば、補正の指令(Notice of Missing Parts)が出される。
審査1
実体審査開始。
↓
まず、単一性要件を満たしているかチェックが行われる。満たしてない場合は限定要求(Restriction Requirement)が出される。
↓
出願人は、複数のクレームのグループから1つを選択。選択しなかったグループに関しては分割出願することができる。
審査2
サーチが行われる。
↓
拒絶理由があると、オフィス・アクション(拒絶通知)が出される。
↓
出願人は、応答書を提出、あるいは補正を行うことができる。
審査3
ガードに参加することができます何歳
拒絶理由が克服されなければ、ファイナルオフィスアクション(最終拒絶通知)が出される。
↓
再度補正をすることができる。
↓
特許可能と判断されれば、特許許可通知(Notice of Allowance)が出される。特許発行料(Issue Fee)を納付すれば(3月以内)、
特許公報が発行され、特許証が発行される。
特許可能と判断されない場合
再度の補正で拒絶理由が克服できない場合、審査継続(RCE)の手続きをすることできる。
RCEは、料金納付さえすれば、何度でも行うことができる。
RCE(継続審査請求):新たな出願ではない。最終拒絶の効果をなくす役割を果たす。
RCEの前身ともいうべきCPA(継続審査出願)は同じ出願書類を新たな継続出願とするものであった。
米国特許出願手続きの主な流れ
特許出願→方式審査→発明単一性調査(限定要求)→実体審査(オフィスアクション、最終オフィスアクション)→認可通知→発行料納付
→特許発行
日本語で出願
出願を急ぐ場合に、日本語で出願することも可能である。この場合、所定期間内(通常5ヵ月程度)に翻訳文を提出しなければならない。
ただし、翻訳文は日本語明細書の忠実な訳でなければならない。従って、後に明細書の内容を変更することはできない。
発明者になれる者
米国では、発明者のみが出願人となりうる(§111)。
すなわち、真実にして最先の発明者の名で出願しなければならない。
ただし、発明者は特許を受ける権利を譲渡することもできる。譲渡証書をUSPTOに提出し、登記されれば、第三者に対して対抗力を有することとなる。
真実かつ最先の発明者の名で出願せずに特許された場合、その特許は有効な特許ではない。
従って、特許無効訴訟において、裁判所によって真実かつ最先の発明者への訂正が認められなければ、特許は無効となる。
しかし、故意に誤った発明者の署名で出願、あるいは発明者が誤っていたのに訂正手続きを採らなかった場合、訂正は認められない。
さらに、故意に誤った発明者の署名で出願した場合、民事上だけではなく刑事上のfraud(詐欺罪)にあたる。
また、共同発明の場合、全ての発明者の名でもって出願しなければならない(§116)。
共同発明者は、
・現実に共同作業してなくても
・各発明者が同程度に貢献していなくても
・各発明者が全クレームにそれぞれ貢献していなくても
共同出願人となることができる。
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3 出願書類
出願に必要な書類
・明細書
・図面
・要約書
・宣誓書および委任状
・譲渡証書
明細書
発明およびその発明を製造し使用する仕方(manner)や方法(process)を、当業者が実施することができるように記載する。
また、最良と考える実施態様を記載する。
最後に、請求項(クレーム)として自己の発明であると信ずる主題を記載し、特許を請求する。
図面
図面は、発明の内容を説明する際、発明の理解を容易にするために、必要な場合に提出されるが、とくに機械、
装置の発明においては不可欠といってよい。
アメリカの特許出願における図面の作成については、かなりシビアな考え方がとられており、Ruleに違反したものは不受理とされ、
完全な図面が提出されたときが出願日となるので注意を要する。
要約書
何よりも、わかりやすく発明内容を伝える。
MPEPによれば、50〜150ワード、ワンパラグラフからなるもの、と規定されている。
宣誓書および委任状(Declaration and Power of Attorney for Patent Application)
アメリカは発明者主義の制度を採用し、発明者のみが出願人となりうる。
宣誓書および委任状は発明者がアメリカに特許出願をしている発明に関して、本発明は自分が最初に発明したものであり、
発明の内容を理解し、また本出願の審査に必要である情報を提供する義務を確認する旨を宣言する内容および
アメリカの特許事務所を当該出願の代理人として委任する旨の内容を示した書類である。
また、アメリカ出願の発明と同一内容の発明が、他国にすでに出願されている場合には、優先権主張の有無を明記して、
その出願国名、出願日および出願番号などをこの宣誓書および委任状に記入しなければならない。
譲渡証書(Assignment)
発明者が職務発明による法人を含めいかなる第三者にも特許権を譲渡しない場合には、譲渡証書を提出する必要はない。
しかし、我が国から外国特許出願をするケースの大部分は職務発明による出願であり、出願をする際には譲受人が判明している。
そのような場合には、可能な限り他の必要書類とともに出願時に提出しておくと、2度手間にならない。
出願料金
特許出願料金はクレームの数によって決まる。
基本料金には、独立クレーム3つと合計クレーム数が20までがカバーされている。
出願料金の改正
2004年7月26日施行
出願の基本料金
$750から$770に
追加クレームの料金
1独立クレームの追加料金
$84から$86に
1従属クレームの追加料金
$18のまま
なお、多項従属クレームは多数のクレームとして数えられる。
例えば...
3つのクレームを引用していれば、3つのクレームとして数えられる。
Small Entityへの料金割引制度
小企業(small entity)、個人、非営利団体の出願に関しては、ほとんどの料金が半額になる。
Small entityとして割引を受けるには、特許を受ける権利または特許権を有していること、出願の時点で大企業に
譲渡していないことが条件である。
出願の時点で、small entity扱いとなると、後に大企業へ譲渡しても、すぐには大企業料金とはならない。
例えば、出願料金は小企業料金で、Issue Feeなどは大企業料金となる。
この場合、 small entityに該当しなくなったことを届け出る必要がある。
もし、大企業料金を払ってしまったなら、支払いから3ヵ月間、差額返還請求をすることができる。
なお、Small entityとは原則、group全体で従業員500人までの企業をいう。
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4 日本国特許明細書と米国特許明細書
明細書(Specification)の記載項目
・日本特許明細書と米国特許明細書では、記載される項目はほぼ対応しているが、それらの項目の記載順序が異なる。
・MPEPに、Arrangement of the Specificationとして、以下の各項目が挙げられている。
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5 明細書作成の手順と考え方
101条で要求される有用性の点から用途を、112条の使用法の要件からその実施方法を記載しておく。
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6 クレームの記載
発明が特許によって保護されるためには、クレームによってカバーされていなければならず、クレームに
カバーされていない発明は保護されない。Markman v. Westview Instruments Inc.,(34 USPQ2d 1321, Fed. Cir., 1995)
112条第2段落
明細書は、出願人が自己の発明であると信ずる主題をとくに指摘して、かつ明確に請求する1以上の請求項で終わらなければならない。
D主題
C明確性要件
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6.1 クレームの構成
クレームは、前文(preamble)+接続部(transition)+本文(body)で構成されている。
What is Claimed is:
1. A process for preparing a synthetic rubberwhich comprises … .
(前文 preamble)
クレームすべき対象を記載した導入部である。
前文には、クレームすべき対象を正確に記載し、不要な記載や、限定を含めない。
例えば...
A process for preparing a synthetic rubber comprising…
A cleaning composition comprising ...
(接続部 transition)
接続語には、
@comprising (which comprises)
Aconsisting of
の典型的な型がある。
それぞれ、クレーム解釈における意味が異なる。
comprisingまたはwhich comprises
この表現は、非限定的用語であり、開放クレーム(open claim)を構成する。
すなわち...
クレームの「本文」に記載した構成要件はクレームされている製品や方法などの本質的部分であり、他のいかなる要素あるいは工程も含みうる。
一方、consisting ofは制限的用語で、閉鎖クレーム(closed claim)を構成する。
すなわち、クレームの「本文」に記載した構成要件のみがクレームされており、それ以外の要素は含まれない。
違い
オープンターミノロジーと
クローズターミノロジー
(本文 body)
クレームすべき主題の各要素を記載する。
・各構成要件を列挙。
・構成要件の相互関係を明確に。
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6.2 クレームの型
- 発明のカテゴリーによる分類
・product claim
・process claim
・product-by-process claim
・apparatus claim
・means claim
- 記載のスタイルによる分類
・Markush claim
・Jepson claim
・Finger printing claim
An insecticidal composition comprising … .
A pyridine derivative of the formula … .
product claim
その製品が新規かつ有用で、その製品自体に特許性がある場合、product claimは許される。
公知のものと類似している場合、公知のものと比べて優れた効果、異なる効果がなければならない。
A process for preparing a compound of the general formula … comprising … .
A method of combatting insecticide-resistant insects which comprises … .
process claim
方法、または既知方法の新規な用途(new use)が含まれる。
例えば:
・化合物の製造方法
・化合物を用いる殺虫方法
Process claimが認められるには、方法自体が新規でなければならない。
したがって、方法の結果物が新規で特許性があっても、クレームされた方法も許されるとは限らない。
逆に、結果物が新規でなくても、方法が新規であれば、許可される。
The herein described hop liquid product obtained by subjecting a mixture of fresh cured hops
and liquid in a hermetically sealed container to a temperature sufficient to extract all the essential oils, essences,
aromas from the hops and disseminate same through the liquid.
生成物が新規性、非自明性を有するものであれば、製法が不明確とされないことを条件として、
product-by-process claimとして生成物の特許権を取得することができる。
また、ある要素については通常の用語で定義し、他の要素を製法で定義した混合型クレームも認められる。
product-by-process claimは、生成物が製法によらないと、はっきり説明できない錯体のような場合、
または公知のものと比べて特定の方法によった場合に予測し得ない結果が得られる場合などに、とくに有用である。
しかし、product-by-process claimでは、その方法によって得られた物だけでなく、他の方法によって得られた物にも
効力が及ぶ、こともある。
Factor VIII: C事件(18USPQ2d 1001, CAFC 1991)
事件
血液由来のFactor VIII: Cに関する特許を有するScripps Clinic Research Foundation が、遺伝子組換え
Factor VIII: Cを研究しているGenentech Inc. を特許権侵害で訴えた。
この特許ではproduct-by-process claimで記載されていた。
判断
カリフォルニア地裁
product-by-process claimでは、クレーム記載の方法と同一の方法によって製造されたものに限り、
あるいは他の方法によってはその物質が製造され得ないことが証明された場合に限り、侵害となる。
被告は控訴した。
CAFC
特許性の判断において、物質は製法に限定されることなく解釈されている。したがって、クレームは、
その有効性と侵害について同じように解釈されなければならない。
しかし、product-by-processの正しい解釈は、クレームに記載された製法で得られる物質に限定されるものではないと判示した。
An apparatus for coating materials comprising … .
apparatus claim
装置自体が新規な場合、このクレームの型が用いられる。
装置自体が公知の場合、方法クレームによって、新規な用途をクレームする。
- means plus function claim
In an aircraft propelled by a jet engine, means for controlling the speed of flight … .
112条第6段
組み合わせ(combination)に関する請求項中の要素(element)は、その構造(structure)、材料(material)または
これを裏付ける作用(acts)を詳述することなく、特定の機能を達成する手段(means)または工程(step)として記載することができる。
means plus function claimは、明細書に記載されたそれと対応する構造、材料または作用およびそれらの均等物を含むものとして解釈される。
機能的に表現した手段の具体例をできるだけ広くかつ多く記載することが、それだけクレ−ムの文言上の範囲が広がるので、権利保護の面から有利である。
クレーム:・・・ means for cutting …
本文: knife, cutter などを記載
記載しなかった"scissors"(ハサミ)は、均等物(equivalents)ではなく、均等論(doctrine of equivalent)の問題と考えられる。
… material selected from the group consisting of aniline, homologues of aniline, and halogen substitution product of aniline … .
マーカッシュクレームは、化学関係の発明において、しばしば用いられるクレームの型である。
用いられる物質が複数個あって、しかもそれらを総括的に表現する用語がないときに、「A、BおよびCよりなる
群から選ばれたメンバー(a member selected from the group consisting of A, B and C)」という表現が用いられる。
Markush claimが許されるためには、そのMarkush groupの各メンバーが、互いに密接した類似関係にあることが必要である。
具体的には…
@広く認められている物理的または化学的分類に属するか、またはその技術分野で認められた分類に属すること、あるいは、
Aクレームされた関係において、それらの機能を果たすための少なくとも1つの共通した性質を有していること。
In an apparatus including a drive means A, a saw means B, a turning means C,
a drill means D and a milling means E; the improvement wherein drive means A is modified to … .
Jepson 事件(Ex parte Jepson, 1917 C. D. 62)
その発明の構成を示すために必要な特徴の一部が公知である場合に、そのような公知部分をクレームの本体(body)
に入れることは、長い間、疑問とされていた。
Jepson事件において、公知の要素を前文(preamble)に入れ、新たな部分を本体に書いて組合わせることによりクレームされ、特許された。
たとえば、
Jepsonクレーム
In a chair including a seat and legs;
the improvement wherein the chair is provided with a back.
アメリカ出願の通常のクレーム
A chair comprising a seat, legs and a back.
Finger printing claim
化学物質の構造が不明であるが、特性によってその物質を他の物質と充分に区分できる場合、物質を化学的、物理的性質だけで定義することができる。
物質を固有の性質(=指紋)で定義することから、 Finger printing claimと呼ばれる。
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6.3 独立クレーム・従属クレーム
Independent Claim
and Dependent Claim
クレームは、他のクレームに依存しない独立の形でクレームしてもよく、他のクレームを引用して、
その引用されたクレームを限定した形の従属クレームにすることも可能である。(§112-B)
従属クレーム
7. A biaxially-orientated film of modified polyethylene-2,6-naphthalate according to Claim 1, wherein ….
または
7. The biaxially-orientated film of modified polyethylene-2,6-naphthalate of Claim 1, wherein … .
独立クレーム
独立クレームは、他のクレームを引用せず、そのクレームだけで完結したクレームで、発明の構成要件を限定するクレーム。
従属クレーム
従属クレームはメインクレームのすべての限定要素に拘束される(§112-C)。
従属クレームは、クレーム内に他のクレームを引用しており、引用されたクレームの構成要件に新たな構成要件を付加するものである。
多項従属クレーム
複数クレームに従属するクレーム(複合従属クレームまたはマルチクレームと呼ばれる)を後の複合従属クレームの基礎としてはならない(§112-D)。
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